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麻農家訪問記(Part.1)~日本の麻を知る~

梅雨がまだ明けきらない7月18日、私は長年の友人である編集者の高島敏子さんと一緒に、8年ぶりに栃木の麻農家、大森由久氏を訪ねました。

実は、10年以上前から麻に関する情報と考察を歴史から学んでいた私は、日本の麻は今どうなっているのだろう?と思い立ち、各方面に人脈をもっていた彼女に相談したところ、彼女自身もその当時、大麻を巡る社会的な事件やそこに関与していた複雑な問題の渦中で、日本の麻栽培の第一人者である大森氏の生の声を取材したいということで、連絡をとってもらい、全ての取材をお断りになっていた大森氏が、アポイントに応じてくださったという経緯がありました。それは、大森氏の高島さんへの信頼が実現させた貴重な時間でした。

高島さんが繋いでくれた大森氏とのご縁は、本当に価値ある出会いとなりました。彼女には心から感謝しています。そして、大森氏ご本人が私を快く迎えてくださったことも、何よりのご縁の導きでした。

その時には、私が学んでいた価値ある大麻草への思いなどもお話させていただき、共感と感性の一致を覚えながら、大麻草に関する知識と理解を日本人に取り戻して欲しいという希望などを話し合い、大変有意義な時間を過ごすことができました。

大麻草が古来私たち日本人のあらゆる生活を支えてきたという歴史や文化が隠され、戦後のGHQの号令により<麻薬指定>されました。そして、日本の生活圏の中に一方的に印象づけをされてきた大麻=タブーが、THCという成分のリスクだけに焦点が当てられ、未だに法規制が是正されない現状に、今は産業麻として神事を中心にした需要に応えながら麻農家としての役目を地道にやっていくしかないね。という大森氏の言葉が印象的でした。

麻の種類と用途を知る

ところで、麻というと、私たちの日常に実は普通に存在しているのですね。違法とされている<大麻>とは違い、耳なじみがあるのは<リネン>があるでしょう。

<リネン>は亜麻繊維から作られていて、B.C.4,000頃から生産されていたといわれます。エジプト古王国時代にはすでにあらゆる場面で使われました。ミイラを巻いていた布はこの亜麻になります。水を早く吸収して放出、高温多湿でも涼しくドライな肌触り。洗えば洗うほど手を加えれば加えるほど柔らかくなる性質をもっています。国内では寝具のシーツやカバー類に使われてきましたが、数年前からファッション市場にはこの<リネン>製のワンピース、ブラウス、パンツ等が多く出回るようになりました。
自然派志向のユーザー層が増えてきたことに比例しているのかもしれませんね。

また、<ジュート>は黄麻ジュートといい、高温多湿なバングラディッシュやインドなどで生産されます。ジュートは工業製品に使用されることが多く、ウールやコットンなどの有機繊維との混紡で頑丈な麻ひもにしたり、麻袋に加工されたりします。

さて、では次に大麻草に由来する<ヘンプ>や<マリファナ>とは、どういう位置づけなのか明確にしておきましょう。ヘンプもマリファナも<大麻草>の名称です。そして、気分の高揚感、幻覚作用があるとされるTHC(テトラヒドロカンナビノール)含有率が0.3%以下の品種を<ヘンプ>20%を超えるものを<マリファナ>とし、区別されています。ただ、0.3%~20%の間の含有量についての基準が国によって曖昧で、日本国内において現状は、<ヘンプ>が産業用麻として生活日用品に利用されています。

ただ、<リネン>比べて<ヘンプ>は高価ですので、一部の高品質な服飾品や日用品に使われていますが、材質表示については、誤解を避ける意味で<麻>という表示に統一されているようです。

<ヘンプ>は環境に優しく、多方面に使われる素晴らしい自然素材として、2016年以降、世界中で需要が増えています。
<ヘンプ>の特徴をおさらいしてみます。

 強度が高い 

ヘンプは洗濯するごとに繊維が丈夫になります。

 調湿性があり、冬あたたかい 

ヘンプ繊維には、無数の穴が空いていて、常に湿度の調節をしてくれます。熱伝導が低いため、夏は涼しく、冬は暖かいのです。

 UVカット効果 

ヘンプは紫外線カット効果があることが分かっています。NGO団体Hemp Foundationによると、ヘンプ素材は99.9%ものUVカット効果があり、コットンより50%以上優れているという結果が出ているようです。

 抗菌・消臭効果 

ヘンプ素材は、抗菌性が高く消臭効果も抜群。何度も洗濯できない鞄やマットなどのアイテムにもぴったり。
この性質を生かして、ごわつくようなイメージのヘンプも、近年の技術進化によってしなやかな糸が作られるようになり、Tシャツ、肌着アイテムも登場しています。

これらは、私たちの生活に密着したヘンプの恩恵の一部ですが、実際には、農業としての栽培法や環境問題への貢献度が素晴らしく高いなど、その価値が見直されているのです。

日本国内で産業用として栽培されているのは、国産の<大麻草>であり、産地は栃木です。そして、今回訪問した大森氏は、認定栽培農家日本一の大麻草の栽培農家さんです。

大麻(英名:Hemp)とは、アサ科アサ属の一年草。約110日で2.5~3mに成長。日本の産地は栃木。「大麻」の名は、明治以降の外来種と区別するため。強度が高く、繊維の中空孔が大きく、水分の吸収・放散が早い。

栃木の大麻は「野州麻(やしゅうあさ)」という名称で、その種は「とちぎしろ」という無毒大麻です。THCの含有がほとんどない。1982年に栃木県農業試験場が在来種ですぐれた「白木」と佐賀県在来種の無毒品種を交配し誕生。

「大森由久」を検索していただくと、一般社団法人「日本麻振興会」がヒットします。前身の「日本麻振興会」は、徳島県、岐阜県、千葉県、栃木県、北海道の麻生産者が発起人となって2012年に設立しています。2020年に、組織を法人化し、大森氏はこの代表理事として、生産者、伝統工芸などの麻加工業者、麻の振興を応援する神職、伝統芸能者、大学研究者や趣旨に賛同する約1万人の会員様とともに、麻に関わる様々な取り組みをされています。

わたしも高島さんも、大森氏を親しく「大森さん」と呼んでいるのですが、本当に柔和で素朴で、正直で真っすぐな気概の持ち主で、8年の月日を経ての再会とは思えないほど、インタビューは楽しく、時間のたつのも忘れて、2時間半という長丁場の会話を楽しませていただきました。お話の最後のほうでは、大森家のご家族が揃って、日本人の美徳をそれぞれの個性の中で生かして人生を歩んでおられることを聞き、心から感動して帰途につきました。

さて、
当日は、澄み渡る青空に軽やかな筆で絵画を楽しむかのような白い雲が広がる空の下、栃木駅からレンタカーを借り、大森さんの工房「野州麻紙工房」のある鹿沼までドライブです。

大森さんからどんな話が聞けたのか、ご報告はPart.2につづきます。この8年間にあった出来事は、本当にポジティブな素晴らしい活動でした。そして、日本の大麻がどのように復活していくのかを、CBDの成長の可能性とともに皆さまと共有したいと思います。

今回は、「とちぎしろ」について詳細を記事にしてくださっているサイトをご紹介します。 この機会に、是非学びを深めていただければ今後にお役立ていただけると思います。

純国産ヘンプ!? 日本が誇る無毒大麻「とちぎしろ」
https://grassroots.site/japanesehemp-tochigishiro/

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